
1877年に帯の織物業として創業した笠盛は1960年代に刺繍業へと業態を変え、現在まで大手ブランド等から様々な依頼があります。しかしその立場に留まるだけでなく、社会に必要とされる存在になり、社員にも「この会社で良かった」と感じてほしいと考え、刺繍の可能性を拡げ新たな価値創造を目指して、2010年に「000(トリプル・オゥ)」ブランドを立ち上げました。独自のブランドを持つことは、自分たちで価格設定が出来るという点で、事業性の観点からも重要なことでした。
デザイナーの片倉洋一さんは、通常業務を行う傍ら、新規事業としてまずは積極的に展示会へ出展し、バイヤーに知ってもらうことから活動をスタートさせていきます。展示会への出展を重ねていく中で、糸だけで作る刺繍のジュエリーという方向性が定まり、2012年に000(トリプル・オゥ)ブランドを代表する球状の形をしたスフィアが誕生しました。
000(トリプル・オゥ)というブランド名には、発想・素材・技術をゼロから考えて製品を作るという意味が込められています。「どんなものを作ったらお客さまが喜んでくれるか?」から発想し、それを素材と技術を組み合わせて実現していく。その過程には、発想の要であるデザイナーだけでなく、ミシンのプログラマーや素材となる糸を作る撚糸職人など、多くの人が主体的に関わっています。例えば通常の刺繍は糸見本から選ぶことが多いですが、アクセサリーという商品の特性上、場合によっては糸そのものを開発したり、思った通りの製品に仕上げることができるか、実際の使用感はどうかなど、きめ細かくチェックしていきます。
ファッション性だけでなく、軽い、アレルギーでも安心、洗えるなどの特徴を備えた000(トリプル・オゥ)は、発表以降、国内外の見本市やポップアップストア、そして自社のネット販売とファクトリーショップなどを通じてファンを増やし、今では笠盛全体の売上げの約50%を占めるまでに成長しています。これからも、養蚕から製品になるまで全て県内で作られた「ぐんまを贈るシルク刺繍ネックレス」のように、群馬県らしさを商品に反映させながら、桐生市の職人さんたちと一緒にするものづくりを大切にしたいとのことです。