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1957年創業の山﨑製作所は、金属加工を専門とする事業者です。経営環境が悪化した頃に事業を承継した山﨑将臣さんは、下請け中心の金属加工以外の事業を立ち上げるため、試行錯誤を繰り返します。そうしたなか、自社の高度な技術力を具体的に見せるべく、金属製のバスケットボールを製作します。そのバスケットボールを、デザインセミナーで知りあった群馬県立女子大学の高橋綾准教授(当時)に見せたところ、すぐにアーティストや学生の作品製作を依頼されることになります。
そこからいくつかの作品製作を手がけるなか、自社にない技術が必要になり、知り合いの加工業者に声を掛け、「カロエ」というものづくり製作集団も立ち上げました。またミラノサローネに出展したり、DARUMA-CUBEなどユニークな作品がニュースに取りあげられたことで、山﨑さんと「カロエ」の活動は、群馬県を超えて広がっていきました。特に2018年に空間アートのミラーボーラーと出会ったことで、商業施設やテレビ局などの屋外クリスマス装飾といった、新しい仕事が生まれました。
作品製作をある程度経験した後、ものづくり補助金申請のため事業計画を作成した際に、空間装飾や什器設計を事業内容に加えることを決めます。金属加工の経験からスピード感を持って試作することや、デザインやアートを理解していることが自社の強みになると考えたわけです。作品の製作依頼が来た時に山﨑さんが大切にしているのは、0か100で判断するのではなく、「こうすればここまで出来る」ということを依頼主に伝え、現実的で最適な落とし所を探ることだといいます。今ではデザイン事業は全体売上の3割ほどに成長し、利益率はこれまでの下請け作業より高いそうです。
アート作品や空間装飾を手がけるなか、山﨑さんは公共や社会的な視点も強めていきます。高崎のシェアサイクル・高チャリ用の駐輪ポートのデザイン・製作や、主婦グループと一緒に家庭ゴミを減らすためのシンクの三角コーナー用製品を手がけるなかから、自社のキャッチコピーが「モノづくりで社会の課題を解決する」が生まれました。直近では、加工業ではどうしても出てしまう端材や廃材をマッチングするプラットフォーム事業にも挑戦しています。