
日東電化工業はエンジン部品のメッキ等の表面処理事業を行なっている会社です。その創業家に生まれた茂田正和さんは、若い頃は音楽業界に身を置き、その後、自身で化粧品企画会社を設立します。そうした流れと日東電化工業の多角化戦略から、日東電化工業のなかにヘルスケア事業部を立ち上げることになります。ヘルスケア事業では「OSAJI」というスキンケアブランドが成長し2023年には分社化されます。そこで美容や健康と関連の深い「食」をテーマにした新たな事業として生まれたのが、テーブルウェアブランド「HEGE」です。
製品開発では、祖業である金属加工/表面処理技術も活用されています。手描きのアイデアスケッチから試作を作り、何度も試作を繰り返しながら製品としての完成度を高める手法が取られています。プロのデザイナーに外注するのではなく、自分たちの作りたい製品を試行錯誤しながら作っていくのは、ものづくり企業ならではの特徴です。
「HEGE」というネーミングは、変化の古語「へげ」であるとともに、ドイツ語の「育てる」「大切にする」といった意味があり、長く愛されるものを作る、長く使うなかでの変化を楽しんでもらいたいといったことだけでなく、食に関わるライフスタイルを変えたいという思いが込められています。特に意識しているのは、料理を作る人が食卓に参加できないことがないよう、「一緒に作って、一緒に囲んで、一緒に食べる」や、「身体によいものを、手抜きではなく手軽に」といった視点です。そのため単に製品を作って売るだけでなく、「HEGE」を使った料理をプロモーションする場「HENGEN」を開設したり、「食」を通して、肌悩みに寄り添う書籍「食べる美容」も出版しています。
製品デザインやブランドのありかたについては、クリエイティブディレクターである茂田さんが方向性を定めていますが、日本の伝統的な美意識(侘び寂び、用の美、陰影礼賛等)を常に意識しているとのことです。またすでに224porcelain(晟土(せいど)/磁器)、釜浅商店、Yuki MIKAMIさんとのコラボ製品も発売しており、今後は自社の金属製品だけに拘らず、HEGEを中心にライフスタイルを拡げていきたいとのことでした。
茂田 正和(日東電化工業株式会社 専務取締兼株式会社OSAJI 代表取締役)